アディポネクチンについて

内臓脂肪と老化抑制について|アディポネクチンを考える


実年齢よりも若く見える人、老けて見える人。
時間の経過は均一なのに、なぜ同じ年齢を重ねているのに若々しさに差があるのか、さらに言うと内臓年齢、細胞年齢に差が出てくるのか?

そんな素朴な疑問への回答がここ最近出ようとしている。

もともと校長は実年齢よりも若く見られるのだけれど、自分でも理由がよくわからなかった。
髪も傷んでいないし白髪もなく、肌もどちらかといえばつるつる・・・な方だ。

う~む、、、これは個人差か?!
とも思ったが、同じように若く見える人に会った際、その人たちの生活習慣と体型を聞き込み、よく観察してみるとある共通点が見つかった。

それは端的に言うと、体脂肪率が低いという事。
肥満の人で実年齢より若く見える人というのはほとんどない。
体脂肪率が低い=痩せている・・・というわけではなく、もちろん標準体型やスポーツ体型を含め、体脂肪率の少ないマッチョな人にも若く見える人が多い。

痩せていても老けて見える人もいるが、おそらくそういう人は痩せているのに体脂肪率が高い人なのだと思う。
若く見える人達の生活習慣は似ていて、多くの人が食事制限をしていたり、食べても太らない体質だったり、定期的に何かしらの運動をしていたりする。
そして内臓脂肪が低い事が共通している。


昨今、糖質制限ダイエットが再び見直されているけれど、もともとは1970年代に流行したロバート・アトキンス氏が提唱したのが最初。
しかしその後、長期的に実施者を追跡すると糖質制限食習慣は寿命を縮めるという調査結果が出され、一時は影を潜めた。
再び注目されている現在は、過剰な制限を設けない糖質制限ダイエットで、長期ではなく一時的に体脂肪を減らすのが目的のものが主流だ。
※一部の医師等は超糖質制限とし、糖質を1日20~30グラム程度しか摂らない方法を提唱しているけれど、これは果たして本当に長期的に見て健康的かどうか疑問が残る。


校長は幼少期から肥満体型ではないので、脂肪細胞数は比較的標準値といえるかもしれない。
食べてもお腹がぽっこりと出ることはないのだが、無尽蔵にバカ食いすることもできないので、胃袋がそれほど拡張しない体質だ。

アルコール類やコーヒー、またスポーツドリンクなどの水分も200ml程度飲むのが精いっぱい。
いつも行くスタバやエクセシオールでは、ほとんど半分以上残してしまう、、、飲めないのだ。
食べてもお腹が出ない一方、ほとんど食べなくても生きていけるとても燃費がよい身体ともいえる。

家庭の体組成計で調べると内臓脂肪レベルは10段階中1。
人間ドックで詳細に調べても相当少ない数値だと言われた。

つまり、若く見える人達の共通点である内臓脂肪が非常に少ないのだ。

ここ数年、アディポネクチンという蛋白質が注目されている。
脂肪細胞から分泌されるのでレプチンと似たようなホルモンか。

効果は動脈硬化抑制、血管強化、心筋肥大抑制、インスリン感度向上などなど様々で、良好な身体形成に作用する素晴らしい健康ホルモン。

特に心臓・血管系の強化に強く作用する模様で「葡萄に含まれるレスベラトロールが長寿遺伝子をオンにする!」と話題になったが、まさにレスベラトロールはこのアディポネクチンを増加させる食材成分らしい。

人の多くの疾患は血管が絡んでいているので、アディポネクチンを上手に分泌できれば病気を抑制できるのではないか。
そう考えた頭の良い人たちがこぞって研究を続けている。
多分今世紀の人の健康において最も重要なタンパク質の1つになるかもしれない。


脂肪細胞から分泌される蛋白質と書いたけれど、脂肪細胞が肥大化した状態、つまり肥満体型の人はこのアディポネクチンが極めて出にくい状態にある。
アディポネクチン分泌は内臓脂肪と逆相関の関係にあるため、内臓脂肪が少ないほど分泌される。
なるほど、となると「痩せている→ただし内臓脂肪が少ない人→血管系強化→若々しさにつながる」という図式になるのだろう。

考えてみたら校長は学生時代から内臓脂肪がずっと低いままだし今でも低い。
街を歩く人を観察しても若く見える人の多くは、おそらく内臓脂肪がとても少ない人なんだと思う。


と、ここまではアディポネクチンと若く見える関係についてなのだけれど、ダイエットに関してもこのタンパク質は素晴らしい効果を発揮する。
通常インスリンが分泌された時と、運動後にのみ細胞表面に移動する「GLUT4」がインスリンとは無関係に細胞表面へ移動し、細胞にエネルギーを取り込む作用があることだ。
少し難しく書いてしまったけれど、人が食べ物を食べたとき、エネルギーを細胞が取り込む必要があるのだが、通常はその扉は閉じている。
しかし糖分を摂取してインスリンが分泌されると「GLUT4」という扉が細胞の表面に現れてエネルギーを取り込む事が出来る。
では糖分は良いのではないか?と思うかもしれないが、通常時では筋肉細胞3、脂肪細胞7程度の割合で、より多くを脂肪に溜め込もうとするのだが、運動後においてはこの値が逆になり、筋肉細胞により多くのエネルギーが取り込まれるようになる。

そのため運動後に食事をした方がよいし、運動することが脂肪蓄積を抑制するという理論になる。

アディポネクチンはGLUT4を細胞表面へ移動させる。
つまりアディポネクチンが分泌されれば、運動をしていなくても運動をしたのと同様の効果を得られるわけだ。

正直すごいね。

では内臓脂肪を減らすにはどうしたらよいかというと、今のところ食事制限が最も効果的と言えそう。
運動は皮下脂肪へはアプローチしやすいが内臓脂肪へはかなり反応が鈍い、内臓脂肪はなかなか落ちないのだ。
ただ、まったくやらないよりはやったほうがいいだろうし、且つ有酸素運動よりも筋トレのほうが内臓脂肪を減らすにはよいらしい。

低炭水化物食によってアディポネクチンが分泌されるという論文が上がっていたが、これは直接的にではなく、おそらく低炭水化物食によって体脂肪が減少し、その結果内臓脂肪も減少、そしてアディポネクチンが分泌されやすくなった・・・と考えるべきだろう。


内臓脂肪は女性より男性の方が付きやすい。
老けて見える人は男性のほうが多い?!ようにも思えるのは、おそらくこのためじゃないだろうか。


若返ることはできないが、老化速度を緩やかにすることは可能だということがこれで理解できる。
また人によって老化進度に差異があるのもまさに理解できる。

もし自分が老けたくない、若々しくありたいと思うなら、化粧品にお金をかけるよりも内臓脂肪を減らすことを何よりも先に考えたほうがよさそうだ。