都合の良いダイエットと勘違いしないように「神経性食欲不振症」について
「やせる」と、一言で簡単にいっても、人によって方法は様々です。
その中で、失恋や強迫観念で食べられなくなったことを口実に「ダイエットできてよかった」と思っている女性、とくに学生が多いように思えます。
たとえば、好きな人に「おまえやせたら好きになる」とか、友人や家族などに、「太りすぎ」と言われたり、ダイエットが成功した後に「もっとやせておかないとリバウンドが怖い」など、様々な心理的な要因で、さらにやせる方向へ自分をもっていってしまい、食べられなくなってしまう現象です。
我慢というよりは、本当に食べたくなくなるので、本人的には「胃が小さくなった」「食が細くなった」ということだけで片付けているようですが、これは恐ろしい病気の兆候かもしれませんので、よく聞いてください。
「食欲を意識してコントロールしている状態」と
「無意識に食べたくなくなっている状態」とでは、
まったく違うのです。
神経性食欲不振症という病気があります、これは主に、思春期の女子にみられる病態で、体の異常がないのに、なんらかの心理的因子がきっかけで不食(拒食)や過食などの食行動の異常・極端なヤセ体型・続発的な無月経などが起こる状態です。
食行動に変化が現れます
・拒食
・少食
・隠れ食い
・盗み食い
・食べ物への固執など
|
「神経性食欲不振症」による体の変化
・皮膚の乾燥
・手掌・足底の黄色化(カロチン血症)
・背部・四肢の産毛密生
・脱毛
・便秘
・浮腫
・無月経
・徐脈
・低血圧
|
行動面ではこのような状態があります
・ダイエットハイ(ヤセ始めに何でもできる有能感)
・活動性の亢進(やせているのに異常に運動する)
・ヤセ願望
・肥満恐怖
・ヤセている事を認めない身体像認知の障害
・病識の欠如
・抑うつ感情
・見捨てられ不安
・強迫傾向
・焦燥感
・無力感、無気力
・睡眠障害
|
合併症として
・不登校
・家庭内暴力
・自殺企図
・盗癖
・性的逸脱行為
・甲状腺機能低下症
・上腸間膜動脈症候群
・Refeeding症候群(リンの低値)
・成長障害
・骨粗しょう症
・不妊症
|
「神経性食欲不振症」になる経過を簡単に解説すると以下のようになります。
ダイエットをきっかけに、失恋やトラブル等の心理的ストレス・胃腸炎などで食べられなくなったことで体重が減少し、そこからさらに体重が減り、食べる事への恐怖感がわきあがり、ヤセたことによる有能感(ダイエットハイ)を味わいます。
標準体重の70%くらいまで体重が減ると身体的にきつくなりますが、もう後戻りできなくなり(または怖くなり)、必要最小限のカロリーさえも摂取できなくなってしまいます。
標準体重の計算は別のサイトに任せますが、標準体重の75%を切ると入院適応です。
60%を下回ると管理された環境で強制栄養の適応。
そして、標準体重の55%を切ると死亡確率が高くなると言われております。
このように、ダイエットに都合がよいなどと勘違いし、病気を放置していると、大変怖いことになりますから、明らかにおかしいな?と思ったら、必ず医師に相談してください。
または、周囲のお友達で、おかしい?!と感じたら、ご両親に報告して上げてください。当の本人は逆に元気で快活なので気づかれないケースもあるのです。
簡単に判断のポイントを書いておきます。
・主に30歳以下の女性で見られます
・著しいヤセ(標準体重の-20%以上)
・不食、大食、隠れ食い、自己誘発による嘔吐が見られ、体重増加に対する極端な恐怖を持っている
・無月経、食欲不振、体重減少の原因となる器質的疾患が見られない
・恥毛/腋毛正常、うぶ毛増加
・安静時徐脈(1分間に脈が60回以下)
・低血圧、低体温、便秘等が見られる
・病識がなく、比較的活動的
・甲状腺、副腎機能は正常で問題がない
このような状態が当てはまる場合「神経性食欲不振症」の可能性が高いと言えますから、医師への相談を早めに行ったほうがよいです。